情報セキュリティが厳しい環境において、インターネットに接続しないオフラインネットワーク下でIT機器を利用する場合があります。
医療機関においても、院内に導入された電子カルテをオフライン環境で利用するケースなど、セキュリティを考慮してオフラインでのみ利用するPC端末を導入することがあります。
このような環境でOffice製品を導入するには、いくつかの課題があります。本記事では、オフライン環境でのMicrosoft Office導入における最新事情を整理し、課題と対策できる方法についてご紹介します。
もくじ
オフライン環境におけるOfficeソフト利用の現状
オフラインで使えるOfficeライセンス LTSC版の課題
Microsoft以外のOfficeソフトを使った対策/コスト削減事例
まとめ:環境や状況に応じて、適切なOfficeソフトのご検討を
オフライン環境におけるOfficeソフト利用の現状

ネットワークに接続しないパソコン端末――例えばクラウドではなく、院内に設置する形の電子カルテ端末を導入した場合、ちょっとした事務仕事や、ExcelやWordでの資料作成などでOfficeを利用する必要があるケースが多いでしょう。
では2025年現在、どんな形でOfficeを入れるのがベストな選択になるのか?
状況と課題を整理していきます。
OEM版Officeの終了
かつてはパソコンの購入時に「OEM版」としてOfficeがプリインストールされている状態が一般的でした。しかし、2024年頃を境に新規でのOEM提供が無くなり、買い切り型や法人向けのソリューションであっても、オンライン認証を伴う仕組みに変化したことで、
従来のように即座にOfficeを使える状況ではなくなりました。
実際、弊社のクライアントでも、2024年の端末導入時に業者から「OEM版の提供ができなくなったので、Microsoft Office製品は後から別途ライセンスを準備してください」と案内がありました。
Microsoft製品の現在のライセンス形態は?
Microsoft製品の購入ライセンスは、大きく以下のように分類できます。
結論として、常時オフラインの環境で利用できるライセンスは、法人向けOffice LTSCライセンスとなります。
月額制サブスクリプション(Microsoft 365など)
パソコンをオンラインに接続して認証管理するため、オフライン環境では基本的に利用できないか、もしくは一時的な認証猶予しかなく、オフラインの状態で利用を続ける事はできません。
買い切り型の永続ライセンス
従来のOfficeプロダクトキーを購入して利用する方式です。現在は定期的なオンライン認証を要求されるため、その都度端末をネットワークに接続する必要があります。
セキュリティ上の都合で常にオフラインで利用するような端末には向きません。
法人向けOffice LTSC
インターネット接続を必要としない永続ライセンスとして提供される、唯一オフライン環境で利用できるライセンス形態です。
※引用1(出典:SB C&S株式会社 Microsoft 365相談センター 新しい法人向け永続版Office「Office LTSC」って何?)
https://licensecounter.jp/microsoft365/blog/2021/10/officeltsc.html
オフラインで使えるOfficeライセンス LTSC版の課題
法人向けOffice LTSCライセンスの課題として、以下のようなものがあります。
サポート期間の問題
永続版といえど、サポートは製品発売開始から5年間と限定されています(LTSC2024の場合)。これは購入日からではなく、製品発売日が基準となっているため、購入タイミングによっては、サポート期間がさらに短くなる可能性があります。
価格が他ライセンスと比較して高額
従来のOfficeに比べて価格が高く、最大18%の値上げが報告されています。
1台あたりの価格が7万円から11万円と、コスト面での負担が大きいです。
Officeソフト構成のバリエーションが少ない
必要最低限の機能だけで済むケースでも、Word、Excel、PowerPoint、Outlook、OneNoteが含まれる"フルセット"のOfficeを導入せざるを得ず、機能過剰な場合があります。
※引用2(出典:Microsoft公式サイト Microsoft Learn Office LTSC 2024 の概要 - Office )
https://learn.microsoft.com/ja-jp/office/ltsc/2024/overview
Microsoft以外のOfficeソフトを使った対策/コスト削減事例

無料で使えるオフィスソフトLibreOffice(リブレオフィス)
一つの代替案として「LibreOffice(リブレオフィス)」という、オフライン・オンライン問わず無料で使えるオフィスソフトがあります。
LibreOfficeはExcel、Word、PowerPoint、Accessなどに相当するソフトが用意されています。
関数やマクロなど、Microsoft Officeが持っている基本的な機能は同じように利用でき、互換性をある程度備えているため、Excelで作成したファイルを開いたり、逆にLibreOfficeで作成したファイルを、Microsoft Officeで閲覧・編集することもできます。
機能面でもExcelに劣らず利用できるソフトとして、近年、家庭や企業、慈善団体、政府機関などでの利用実績が拡大しています。
※引用3 (出典:オフィススイートLibreOffice LibreOfficeを使っている団体)
https://ja.libreoffice.org/discover/who-uses-libreoffice/

LibreOffice(リブレオフィス)の注意点
Microsoft Office互換性があると言っても、完全ではありません。
一部の機能や、表示が多少ずれることにより、Microsoft Office、LibreOfficeそれぞれで作成したファイルをお互いのソフトで開いた時、レイアウト崩れなどが起こることがあります。
外部とのやり取りが限定的な環境や、一部特殊なマクロや関数など、高度な機能を利用しない環境であれば、作成したファイルをMicrosoft Officeで開く事なく利用できるので問題は生じませんが、
例えば外部業者とのファイル共有時、誰かが作成したファイルを、別のOfficeソフトで開くとレイアウトの崩れが生じることがあります。
クリニックでのコスト削減事例
弊社のクライアントの実例をご紹介します。
ネットワークに接続しない環境での電子カルテ端末を導入した際、電子カルテ端末10数台のOffice導入策として、LibreOfficeを採用しました。
これにより、Microsoft Officeを採用した場合と比較して100万円以上のコスト削減と、かつ電子カルテ端末上での事務作業を問題なく行える環境を構築することができました。
まとめ:環境や状況に応じて、適切なOfficeソフトのご検討を
ネットワークに接続しないオフライン環境でのパソコン端末へのOffice導入は、
選択肢としてMicrosoft Officeの場合LTSCの法人向け永続ライセンスのみで高コストになりがちで、要件によってはLibreOfficeのようなオープンソースソフトで十分対応可能なケースも多く存在します。
環境に応じて適切なOffice製品を選択することで、コストを最適化することができます。
LibreOfficeは無料でダウンロード・インストールが可能なので、まずは実際に試してみることをおすすめします。
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